仕事で使う
生成AIの社内ルールの作り方決めておきたい10の項目と、そのまま使えるひな形
公開:2026-10-11情報の確認日:2026-10-11
生成AIの社内ルールは、「何のために使うか」「使ってよいサービス」「入力してはいけない情報」「答えの確かめ方」「著作権」「困ったときの相談先」を決め、小さく始めて定期的に見直すのが基本です。
ルールがないと、社員が自分の判断でいろいろなAIを使い始め、情報の漏れや、まちがった内容の外部への発信につながるおそれがあります。この記事では、決めておきたい10の項目と、自社に合わせて直して使えるひな形を紹介します。
なぜ社内ルールが必要なのか
- 情報の漏れを防ぐ:お客さんの個人情報や社外秘が、外のサービスに入力されるのを防ぎます(くわしくは「AIに入力してはいけない情報」)。
- まちがいの発信を防ぐ:AIはもっともらしい誤り(ハルシネーション)をすることがあります。確かめずに外へ出すと、会社の信用に関わります。
- 権利のトラブルを防ぐ:他人の文章や画像をもとに作ったものは、著作権の問題になることがあります。
- 隠れた利用を防ぐ:ルールがないと、社員が自分の判断で個人のアカウントを使い始めます(シャドーAI)。
ルールの目的は「禁止すること」ではなく、安全に使えるようにして、仕事を速くすることです。
作る前に決めておくこと
- 何のために使うか:文章の下書き、要約、調べもの、表の作業など、会社として使ってほしい場面を決めます。
- だれが対象か:正社員だけか、パート・アルバイト・業務委託の人も含むか。
- だれが責任を持つか:ルールを作り、質問に答え、見直す担当者(部署)を決めます。
ルールに入れたい10の項目
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 1. 目的 | 何のためのルールか(安全に使って仕事を速くする、など) |
| 2. 対象 | だれが守るルールか |
| 3. 使ってよいサービス | 会社が認めたサービスとプラン(入力内容を学習に使わない会社向けプランなど)。それ以外は使わない、または申請して認めてもらう |
| 4. 入力してはいけない情報 | パスワード・カード番号・マイナンバー、本人の同意のない個人情報、会社が外に出すことを認めていない社外秘など |
| 5. 気をつけて入力する情報 | お客さんや取引先の名前は置きかえる、契約の金額は消す、など |
| 6. 答えの確かめ方 | 数字・日付・固有名詞・法律に関わる内容は、必ず人が確かめてから使う。外に出す文章は人が最後に読む |
| 7. 著作権と他人の権利 | 他人の作品に似たものを作らせない、実在の人の顔や声をまねない、作った画像を使う前に確かめる |
| 8. AIで作ったことの表示 | どんな場合に「AIを使って作成」と書くか(お客さん向けの文書、画像など) |
| 9. 困ったとき・事故のとき | まちがって秘密を入力したときなどの連絡先と、すぐにすること |
| 10. 見直し | だれが、どのくらいの間隔で見直すか。AIのサービスはよく変わるので、定期的に見直す |
そのまま直して使えるひな形
〔 〕の中を自社に合わせて書きかえてください。
〔会社名〕 生成AI利用ルール(〔2026年〇月〇日〕制定) 1. 目的 生成AIを安全に使い、仕事の質と速さを上げるために、このルールを定めます。 2. 対象 〔全社員・パート・アルバイト・業務委託の方〕が対象です。 3. 使ってよいサービス 会社が認めた次のサービスだけを使います。〔サービス名とプラン〕 それ以外を使いたいときは、〔担当部署〕に相談してください。 4. 入力してはいけない情報 ・パスワード、暗証番号、カード番号、マイナンバーなどの番号 ・お客さん・社員の個人情報(名前と連絡先、住所、健康のことなど) ・〔発表前の商品、決算、人事、契約の中身〕などの社外秘 5. 気をつけること ・人名や社名は「Aさん」「B社」に置きかえて入力します。 ・AIの答えは、数字・日付・名前・法律に関わる内容を必ず確かめてから使います。 ・社外に出す文章や画像は、必ず人が最後に確かめます。 ・他人の作品に似たものを作らせたり、実在の人の顔や声をまねたりしません。 6. 困ったとき まちがって秘密を入力したときや、判断に迷うときは、すぐに〔担当部署・連絡先〕に連絡してください。 7. 見直し このルールは〔担当部署〕が〔半年〕ごとに見直します。
ルールの作り方:5つの手順
- 今の使われ方を聞く:すでにだれが、どんな仕事で、どのAIを使っているかを聞きます。隠れた利用がないかを知るためにも大切です。
- 案を作る:上の10の項目とひな形をもとに、自社の案を作ります。AIに「この情報をもとに、社内ルールの案を作って」と頼んでもかまいません(社外秘は入れずに)。
- 小さく試す:まず一部の部署で使ってみて、分かりにくいところや困ったことを集めます。
- 全員に伝える:ルールを配るだけでなく、短い研修で「入力してはいけない情報」と「答えの確かめ方」を例で伝えます(AIリテラシーを高める)。
- 定期的に見直す:AIのサービスや料金、各社のデータの扱いはよく変わります。決めた間隔で見直します。
よくある失敗
- 全面禁止にする:かえって社員が隠れて個人のアカウントで使うおそれがあります。
- 長すぎて読まれない:全員が守るルールは1〜2ページを目安にし、くわしい手順は別の資料にします。
- 作りっぱなし:サービスの設定や料金が変わっても、ルールが古いままになりがちです。
- 使ってよいサービスを決めていない:「気をつけて使う」だけでは、どのサービスの、どのプランならよいかが分かりません。
参考になる国や団体の資料
- AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省):AIを開発・提供・利用する事業者の心構えをまとめた国の指針です(AI事業者ガイドライン)。2026年3月31日に第1.2版に改定されています。
- 生成AIの利用ガイドライン(日本ディープラーニング協会):会社が自社のルールを作るためのひな形です。2023年5月に公開され、2023年10月に第1.1版が出ています。無料でダウンロードできます。
- 生成AIサービスの利用に関する注意喚起(個人情報保護委員会、2023年6月2日):個人情報を入力するときの注意点です。
- AIと著作権について(文化庁):生成AIと著作権の考え方をまとめています。
どの資料も更新されることがあります。使う前に、公式ページで最新の版を確かめてください。
よくある質問
生成AIは全面禁止にしたほうが安全ですか?
全面禁止にすると、社員が隠れて個人のアカウントで使う「シャドーAI」が起きやすくなるおそれがあります。使ってよいサービスと使い方を決めて、安全に使える道を用意するほうが、管理しやすくなります。
社内ルールはどのくらいの長さがよいですか?
全員に読んでもらうルールは、1〜2ページに収まるくらいが目安です。くわしい手順や例は、別の資料や研修で補います。
ひな形はありますか?
日本ディープラーニング協会(JDLA)が、会社向けの「生成AIの利用ガイドライン」のひな形を無料で公開しています。この記事のひな形も、自社に合わせて直して使えます。
この記事に出てきた用語
生成AIの社内ルール(利用ガイドライン)社員が生成AIを使うときの決まりをまとめた、会社の中のルール。AIガバナンス会社や組織が、AIを安全・適切に使うためのルールと管理の仕組み。シャドーAI会社が認めていない生成AIのサービスを、社員が自分の判断で仕事に使うこと。学習への利用(オプトアウト)入力した内容をAIの学習に使わせないように、設定や契約で断ること。ハルシネーションAIが、事実でないことをもっともらしく答えてしまうこと。生成AIと著作権AIの学習や、AIが作ったものをめぐる著作権の問題。AI事業者ガイドライン総務省と経済産業省がまとめた、AIを開発・提供・利用する事業者のための指針。AIリテラシーAIのしくみ・できること・限界を理解して、正しく使いこなす力。責任あるAI公平さ・安全・プライバシー・説明のしやすさなどに気を配って、AIを作り使う考え方。
出典:「AI事業者ガイドライン」掲載ページ(総務省)/『生成AIの利用ガイドライン』第1.1版を公開(日本ディープラーニング協会)/資料室(日本ディープラーニング協会)/生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会、2023年6月2日)/AIと著作権について(文化庁)/テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(デジタル庁)